桃山学院大学経済学部 内山ゼミ

今回は「東南アジア経済」を専攻するゼミで、「東南アジア諸国の魅力を伝える展示会・模擬店」や「日ラオス友好促進活動」など、ユニークな活動を展開している内山ゼミの方々にお話を伺いました。
今回のインタビューには指導教員の内山先生(経済学部准教授)、第6期ゼミ長の野村さん(経済学部4年次生)、副ゼミ長の石川さん(同)がインタビューに答えてくださいました。
東南アジア、主にラオスについて研究している内山先生、今回のラオス研修(2024年2月)で初海外だったお2人のお話をぜひ最後までご覧ください!

内山ゼミとして普段はどんな研究をされているのですか

内山先生:ゼミ生一人ひとりが東南アジアの一国を専攻国として持ち、その国の経済や社会が抱える課題を抽出し、その解消に向けた研究をしています。ラオスを含め、ASEAN(東南アジア諸国連合)後発国に対する日本の開発協力のあり方はその一例です。

これまでに実施されてきたODA(政府開発援助)プロジェクトを整理し、今後はどのような方向性で開発協力がなされるべきかを検討するなどしています。日本政府には国別の開発協力方針がありますが、そこに一石を投じるような研究を心がけています。
2019年度には、当時の4年次ゼミ生(第3期)が「ラオスの開発のために何が必要か-ODAのあり方を中心に-」というテーマで、学内の学生研究発表大会で、学長賞(最高位)を受賞したことがあります。

なぜ東南アジア経済について研究したいと思ったのですか

内山先生:母校の福井県立大学経済学部2年次に、恩師の坂田幹男先生(福井県立大学/大阪商業大学名誉教授)の「アジア経済論」を受講し、興味を持ったのがきっかけです。
当時(2000年代中頃)、「東アジア共同体」の創設についての議論が盛んであり、「ASEAN経済統合」の意義や課題に着目するようになりました。この過程で、ラオスをはじめ、ASEAN後発国の経済的底上げのために何が必要かを研究するようになりました。

野村さん:人気テレビ番組の「世界の果までイッテQ!」(日本テレビ)を小さい頃から視聴していて、芸能人が世界各国で活動する中、東南アジアの国々の風土や人々の雰囲気にとても惹かれたためです。そんな中、大学2年次秋に所属するゼミを選択するタイミングで、東南アジア経済について学ぶ内山ゼミと出会いました。3年次からこのゼミに所属し研究を始めています。

石川さんゼミ募集の説明会資料で見た、内山ゼミの先輩方の桃山祭(大学祭)での活動やラオス研修での取組に魅力を感じ、私も参加したいと思ったからです。
また、それは自分にとって今まで経験したことのないことでしたので、このゼミに入ることで、自分の成長や新たな価値観が醸成されるのではないかと思い、このゼミで研究することを決めました。 

ラオス研修とはどのような研修ですか

内山先生:ラオス研修は、「東南アジアのすゝめ」と題した、「桃山祭での東南アジア諸国の魅力を伝える展示会・模擬店」(2017年度より、過去5回開催)の延長線上にある活動です。
まず展示会は、東南アジア各国の紹介資料や民族衣装を展示するもので、ゼミ生が来場者に専攻(担当)国についての解説をします。幅広い年齢層の方々が来られますので、特に子どもたちには、東南アジアに関するクイズを楽しんでもらうなどしています。模擬店では東南アジアの飲食物を販売するなどしています。過去には、ミャンマー産のミルクティーやタイ産のトムヤムヌードルなどを提供しました。

つまり、来場者に東南アジア諸国への関心を持ってもらうための企画です。人に説明するには何倍も勉強しなければなりませんし、ゼミ生たちはこうした環境に身を置くことで、真剣さが増していきます。

さらに、日本とラオスの友好関係を促進する活動「日ラオス友好促進活動」に取り組みます。展示会での募金と模擬店での収益の半額を活用し、ラオスの小・中学校や高校に対して、学習教材や学用品、スポーツ用品、日本紹介グッズを贈呈するなどしています(2022年度のみミャンマーの日本語学校を対象に実施)。

ラオス研修は現地の対象校に贈呈物資を届け、親善交流を行うことを主なミッションとしています。並行して、JICA(国際協力機構)ラオス事務所やJETRO日本貿易振興機構)ビエンチャン事務所、ラオス国民議会を訪問し、ヒアリング学習することで、ラオスについての理解を深めます。

ラオス研修を実施している目的はなんですか

内山先生:主な狙いとしては、以下の3点になります。

私は桃山学院大学の教員ですので、第1に、ゼミ生の教育・指導上の目的があります。東南アジア経済のように、海外のことを学ぶうえで、日本国内で文献を読んだり教員から話を聞いて学習するだけでは不十分です。自ら現地に足を運び、人々と交流することで、ラオスについての理解を深めてもらいたいと考えています。また、桃山祭での活動や「日ラオス友好促進活動」を通じて、来場者やラオスの子どもたちを笑顔にするためには何をすべきかを考えてもらうことに重点をおいています。ゼミ生たちは大学卒業後、企業や地方自治体等、様々な組織で働くことになるわけですが、対象は違えども、人々を笑顔にする(社会に貢献する)ために何をすべきかということは、共通してくると考えています。ゼミの経験が社会に出て役に立てばうれしいですね。

2に、活動名の通り、日本とラオスの友好関係を促進することです。20名程度の小さな組織であるゼミですが、努力と工夫次第で、わずかながらも寄与することが可能だと考えています。
ラオスの小・中学校の子どもたちにとって、日本の大学生が親善交流のために訪れ、プレゼンテーションやスポーツ交流会を催したり、友好の証として物資を贈呈することは、強く印象に残る出来事です。彼らが日本に関心を持つ、草の根活動になっていると思います。「日ラオス友好促進活動」は2017年度以降5回(ミャンマー対象の活動も含む)、ラオス研修の実施は、2019年度と2023年度で計2回。親善交流や贈呈物資の対象は500名強にすぎませんが、今後活動を継続していくことで、その数は増大していきます。将来的に日本に留学することや日本企業への就職を意識することに繋がる可能性さえ、期待できると考えます。

3に、ゼミ卒業生の応援です。ゼミというのは3、4年次の2年間で、授業自体は終わってしまいますが、人としての付き合いが終わるわけではありません。卒業後、彼らが社会人として順調に歩んでいくことを願っています。ゼミ生に困ったことがあったら、いつでも力になりたいですね。「日ラオス友好促進活動」における2023年度の親善交流の対象は、ゼミ第2期の卒業生(2018年度卒)のパチャンペン・ティッパポーンさんが英語教員として勤務するセンビライ小・中学校でした。ラオス研修でのこの活動は彼女に少しでもプラスの影響を与えられたらという思いも込められています。

ラオス研修に参加した目的はなんですか

野村さん:今まで活動してきた、「日ラオス友好促進活動」を最後まで成し遂げたいという気持ちが強かったのが大きいです。それと、私は野球を小中高と経験していたのでラオスでも野球の楽しさを広めるために、野球教室をやりたかったからです。あと、海外に今まで行ったことがなかったので、自分が好きな東南アジアに実際に行くよいチャンスだったので、研修への参加を決意しました。

石川さん:現地でしか感じられないことを得たかったからです。普段、国内で文献やデータから調べるのと、現地を訪問し、直接五感で見て感じるのとは全然違うと思っていました。私にとって現地の空気を肌で感じることは知見を増やすことにも繋がり、今後の研究にもよい刺激になると思い研修の参加を決意しました。

ラオスに実際行ってみて、行く前と後はどう感じましたか

野村さん:ラオス人の人たちはとにかく国民性が穏やかで優しいです。日本人と似ているなと感じました。生活環境に関しては、首都に行ったということもあるとは思いますが、意外と生活するにあたって不便な点がなかったことに驚きました。例えば、コンビニがどこにでもある、トイレも綺麗、停電がない。あと交通事情は日本と異なりルールが滅茶苦茶な
ところがありました。信号が壊れてもそのままでした。野良犬、野良猫、野良馬がいた
のは衝撃でした。特に馬。
食べ物に関しては、思っていた以上に食べ物が美味しくて、何を食べても美味しかったです。現地で飲むラオスビールは格別でした。
建物は建設途中で放置されているものがありびっくりしました。

石川さん:ビエンチャンセンターなどの真新しい建物が意外と多かったことは驚きました。日本のショッピングモールと大差なかったです。特に食べ物に関しては、意外と日本の方でも口に合いそうな料理が多く困らなかったです。

 

内山先生:10年以上にわたって、ラオスに注目していますが、この間、中国関連の投資の増加、中国ラオス鉄道の開通、ラオス国内の交通量、ビルの建設の増加等、様々な変化がありました。
経済発展が着々と進む一方で、少し残念なのは、日本とラオスの経済交流が思った以上に伸びなかったことです。日本企業の進出が2013年に100社程度であったのが、2024年時点で、160社程度となっています。ラオスは内陸国で海や港がない、平地や人口が少ないなど、投資環境の上では不利な点がありますが、日本企業には、ラオスの特性や長所を活かした投資を検討してもらいたいですね。
ラオス情報センターさんがラオスの様々な側面を発信することで、日本での認知度が上がり、そうした動きにつながるとよいですね。今後に期待したいところです。

今回のラオス研修内容で一番印象に残ったことを教えてください

内山先生:センビライ小・中学校との親善交流が実現し、生徒の皆さんからとびっきりの笑顔・歓声で迎えてもらえたことです。ページ冒頭の同校と本学の「友好の証」となる絵画(センビライ中学校4年次のラッタナー・ターマーソードさんが作画)を贈呈されたときは、胸が熱くなりました。あと、ゼミ生の活躍する姿、一生懸命な姿ですね。ゼミ単位で海外研修を実施するには様々なリスクや制約がありますが、実現できてよかったなと思いました。

野村さん:ラオスの国民性は本当に印象的で、とにかく優しいです!!私が拙い英語で話しかけると、店員さんは英語がわからないのにも関わらず、懸命に意図を汲み取ろうとしてくれて本当に感動しました。皆さんも絶対にラオス人の優しさを感じるべきです。自分も優しくなれる気がします。

石川さん:小中学校を見学しに行った時、設備面や授業形態など、根本的なところは日本の学校とあまり違いを感じなかったという部分で逆に印象に残りました。
しかし、より詳しく調べてみると、見た目よりも教育制度などが整っていない現実もあったので、しっかり研究を進めていきたいと思いました。

今回の研修は自分の価値観をどう変化させましたか

野村さん:自分の視野がとても広がりました。海外に行った時に不安に感じる気持ちや文化の違いなどを体験することができたことで、日本に来ている外国の方々の気持ちをより理解し、親切に接しようという姿勢を身につけることができました。これからの人生に必ず役に立つことだなと思います。

石川さん:各国にそれぞれの価値観があるということを再認識し、視野が広まりました。日本では常識だと思っていたことが、海外の国では重要視されていないなど、国が違えば価値観もガラリと変わります。このことにこの研修で気づくことができたのはラッキーでした。これからにも必ず生かしていこうと思います。

内山先生からみてゼミ生にどんな成長変化がありましたか

内山先生:研修に参加した3名のうち、2名(野村さん、石川さん)は初めての海外渡航でした。国境の壁を大きく打ち破って、見識を広げたように感じます。
ラオスのことをよく観察し、しっかり向き合い、現地の人々と接していました。もともとしっかりした学生でしたが、研修を通してさらにたくましくなったようにも思います。海外で活動するには、先を見通して行動できなければなりませんが、そのあたりもしっかりできていました。社会人としての仕事にも通じてくるところですので、今後に大きな期待ができると思います。

ラオスは好きですか?またどんなところが好きですか

内山先生:もちろんです。気候、風土、食べ物もそうですが、やはり人々の気質、温かさですね。ラオス研究に携わることで、多くのラオスの方々と接しましたが、皆さんとても親切で、優しかったです。この記事を読んでいる皆さんも、ラオスを訪問すると同様に感じるでしょう。

野村さん:大好きです!! ラオスの人々やラオスの雰囲気、ラオスの食べ物。最高です。現地で現地の料理を食べるから最高なんですよね!!ラオビアサイコーーーです!!

石川さん:もちろん大好きです!!人柄の良さが1番の理由で、お店の人やホテルの受付の人もそうだったが、接するたびに優しさを感じました。

 

ラオスで気をつけるべきことはありますか

内山先生:安全性の高い国ですが、外務省の海外安全ホームページ等の情報から、注意すべき点を抑えておくとよいかと思います。

野村さん:歩行者優先ではないので車には気をつけでください。野良犬にたいしては堂々とすればOKです。喫煙者の方は空港に喫煙所がない、ラオスのタバコ高いので気をつけてください。あと、みずも硬水が合わない人は気をつけたほうがいいかもしれません。

石川さん:暑いので熱中症。野良犬猫がいるので狂犬病などに気をつけないとですね。あと、魅力あるものが多いのでお金の使いすぎですw

今回のラオス研修を踏まえて今後の進路はどうお考えですか

野村さん:日本に来てくれる外国人観光客に日本を好きになってもらうようなサービスをする企業で働きたいと思っています!もっとたくさんの人に日本を好きになってもらいたいです

石川さん:この研修で得た経験や知識は、どの企業に行っても活かせることがあると思うので、この研修での経験を武器に自分の進路を進めていこうと思います。

内山ゼミの今後のラオスや他の国々との交流活動について、展望や計画はありますか

内山先生:今後もゼミの教育・指導の一環で「日ラオス友好促進活動」を続けていきたいです。できる限り多くの小・中学校や高校、日本語学校、大学などと親善交流の機会を作り、ラオスの方々から、日本に対しよいイメージを持ってもらえるように努めたいですね。
そして、関係する皆様から助言をもらいながら、活動の幅を広げていきたいと考えています。それから、ラオスをはじめとする、東南アジアの国々の魅力をより多くの学生に伝えて、彼らの世界観や価値観に少しでも影響を与えられたらよいですね。

このページを見てくれた方に一言!

内山先生:ラオスのことやゼミの活動について、大学生や高校生など、特に若い方に関心を持ってもらえたらうれしいです。協力して何かを試みたいときは、お声がけいただけたらと思います。

野村さん:ラオスは安心して行ける国です!!皆さんぜひ訪問してみてください!!

石川さん:いちばんはじめに行ってよかったと感じる国でした。初海外で不安な方、どこにいこうか迷っている方はまずはラオスにぜひ行ってみてください!

プロフィール

名前:内山怜和
出身:福岡県福津市
出身大学:福井県立大学、同大学院
所属・職位:桃山学院大学経済学部准教授

専門分野:アジア経済論、開発経済論
著書:坂田幹男・内山怜和(2016)『アジア経済の変貌とグローバル化』晃洋書房。
論文:内山怜和(2023)「ラオス経済の転換と日本のODA」『桃山学院大学経済経営
論集』第64巻第4号。

名前:野村優介
出身:大阪府堺市
所属学部・学年:桃山学院大学経済学部4年次生
研究内容:ラオス経済、ミャンマー経済

名前:石川大真
出身:大阪府和泉市
所属学部・学年:桃山学院大学経済学部4年次生
研究内容:ラオス経済、ミャンマー経済

取材日:2024年 4月21日(日)